●marantzのプリメインアンプ。
どうも納得がいかなかった。あまりにも私にとってあまりにも無名でしかも日本なのか海外なのかよく分からないメーカmarantz「マランツ」。そして私が勤務していた店にあったのは2万円から4万円台の安いタイプで、どうやって鳴らそうにも押し出しの弱さ、あまりにも控えめすぎる音に辟易していたものだった。
しかし、オーディオの歴史の中で、marantzが残した功績は大きかった。特にアンプの分野では世界に誇るものだったことを知るのは、店に勤務してから4年たってからのこと。世界に先駆けてトランジスターアンプを開発。そして、設計、生産を日本に移してからも、アンプの分野では控えめながらも、地道に練り上げてきたものだった。
●marantzの印象を覆したPM-88SE。
marantzのアンプは、中身はどうであれ、スイッチ部分があまりにも「ちゃち」だった。そういう部分を除いて、「音」という面においては、名機PM-88SEは決して外すことはできない。1990年に発表されたその機種は、PM-80の後継機種であるPM-88をブラッシュアップ。トロイダルトランスに、銅メッキシャーシという贅沢な作りにもかかわらず、定価90,000円という破格のものだった。
そして、そのアンプから出される音は、marantz特有の控えめという印象ではあったが、しっかりと芯のある聴いていて安心のできる心地よいものだったのだ。
他メーカにありがちだった、とにかくワイドレンジで前面に出し切るという音に疲れた人たちが、ひとたびmarantzのアンプの音を聴くと酔いしれ、そして購入していった。
●スピーカーとの相性は難しい
そんなmarantzのアンプだが、一つ難を言うと、スピーカーとの相性だった。日本のスピーカーはワイドレンジで低音から高音までフラットに出す。そういう音を念頭においてmarantzのアンプで聴くと、ちょっと拍子抜けする。「???」と思ってしまうのだ。唯一これと思ったのは、marantzのレファレンスでも使っている、B&W。扱いの難しいスピーカーほど、うまく鳴らしてくれるのがmarantzのアンプの不思議なところ。そして、ベストマッチの組み合わせとなったとき、心地よい音を出してくれる。今でもそうなのだろうか?
D&Mになってから、少々路線変更した向きのあるmarantzのアンプ。誰にでもよい音をという姿勢が個性をなくすと言われればそうかもしれない。
しかし、ピュアオーディオは万人のものという考えは、新しいmarantzの方向性を示しているのかもしれない。ニュープレミアムデザインとなったmarantzのアンプ。これからも目が離せないメーカとなった。
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