●アナログ讃歌。
かつて、オーディオにおける再生機の主流は、レコードプレーヤでした。そして、その音を聴くためには、カートリッジを装着し、針圧調整をおこない、レコードをジャケットから取り出し、そっとターンテーブルの上に置く。そして、ターンテーブルを回し、回転が安定したところで、レコードの上に、そっと針を乗せる。
そんな一連の儀式があって初めて、心和む音楽を聴くことができたのです。
しかし、CDが出て以来、手軽に聴くことができる音楽媒体として再生の主流はCDとなり、レコードは過去の物となっていきました。そして、「レコードプレーヤー」は「アナログプレーヤー」となってしまったのです。
一時期、DJの流行により、アナログが復活したかに思えましたが、オーディオの世界とDJは別物。純粋に音楽を聴くためのアナログ(レコード)プレーヤは日本のメーカーからはほとんど姿を消したのでした。
●レコードの世界では常に最先端だった。
DENONの前身である日本コロムビア。そしてその前身である、日本蓄音器商会が1910年(明治43年)、国産初の蓄音器である「ニッポノホン」を発売。日本の国産オーディオはここから始まったのでした。そして、1951年(昭和26年)、日本初のLPレコードを発売。日本コロムビアは常に、レコードの世界では最先端を走っていたのです。
そして、NHKとの共同開発による、MC型カートリッジ、DL-103を開発。それが民生用としても発売され、現在でも多くのオーディオファンに愛用されています。
また、レコードプレーヤーも数多くの名機を出し、放送局におけるレコードプレーヤのほとんどがDENON製だったのです。かつて耳にしたことがあるラジオから流れる曲も、DENONのレコードプレーヤ、カートリッジから出される音だったのです。
●時代と共に
オーディオの世界を大きく変えたのは、CDであることは間違いありません。しかし、その礎を築いたのは、実は日本コロムビアでした。NHKとの共同でPCM録音技術を開発。PCM録音されたレコードが発売されたのです。これにより、オーディオの世界にもデジタルの波がやってきます。
やがて、CDが発売され、アナログであるレコードは一部のマニアだけのものとなってしまいました。
レコードの世界で常にトップを走っていたDENON。かつてレコード会社と一体だった会社ゆえ、社会的義務としてレコードプレーヤを出し続けたように思えます。しかし、会社として利益の出ないものは中止せざる得ません。1996年のDP-900Mは、「DENONマニュアルプレーヤー最終章」として発売。もう、レコードプレーヤは開発しないとまで言われました。
しかし、膨大な資産であるレコードは完全に消えることはありません。聴き続ける人がいる限り、アナログの火は消していけないという思いからか、1999年、DP-900MUを発売。すでにその頃から新しいアナログプレーヤの開発構想があったのではないかと思います。
そして、2003年、DP-1300M、DP-500Mを発売。ほとんどの部品を型から造りあげ、そしてトルクモーターも新開発するという、プレーヤーのDENONという名を汚さない逸品を作り上げたのでした。
デジタルという1と0による無機質なものよりも、手間のかかる、そして聴いて何故か癒されるアナログがまた注目されています。そして、アナログ(レコード)がある限り、DENONは、アナログプレーヤーを出し続けると思います。
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